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Case 21 味見してからかけてもらえます?

Author: Amy
last update publish date: 2026-10-29 12:43:59

午前10時。

私は昨日買ったばかりのノートを開いた。

表紙には赤いペンで、

予約

と書いてある。

記念すべき最初の名前。

10:00 松本亜紀様

ベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

少し不安そうな女性が入ってくる。

「予約した松本です」

「お待ちしておりました」

言ってみる。

少しだけ店らしくなった。

「本日は、旦那様ですか? 彼氏様ですか?」

「夫です」

受付番号:021

松本亜紀、40歳。

夫42歳。

結婚13年。

「ではまず――今日、何をされました?」

「醤油です」

「醤油?」

「昨日、肉じゃが作ったんです」

「はい」

夫が席につく。

妻が肉じゃがを出す。

夫は箸を持つ。

そして一口も食べずに、

醤油。

ドボドボ。

私は赤いペンを止めた。

「味見は?」

「してません」

書く。

本日の罪状:料理人への確認なく味を修正

「肉じゃがだけ?」

「カレーにはソース」

「はい」

「目玉焼きには醤油」

「好みですね」

「私が作ったパスタには、食べる前から粉チーズ」

「なるほど」

「昨日は言いました。“一口食べてからにして”って」

「ご主人は?」

「“俺、濃い味好きだから”」

私は追記した。
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    午前10時。私は昨日買ったばかりのノートを開いた。表紙には赤いペンで、予約と書いてある。記念すべき最初の名前。10:00 松本亜紀様ベルが鳴った。「いらっしゃいませ」少し不安そうな女性が入ってくる。「予約した松本です」「お待ちしておりました」言ってみる。少しだけ店らしくなった。「本日は、旦那様ですか? 彼氏様ですか?」「夫です」受付番号:021松本亜紀、40歳。夫42歳。結婚13年。「ではまず――今日、何をされました?」「醤油です」「醤油?」「昨日、肉じゃが作ったんです」「はい」夫が席につく。妻が肉じゃがを出す。夫は箸を持つ。そして一口も食べずに、醤油。ドボドボ。私は赤いペンを止めた。「味見は?」「してません」書く。本日の罪状:料理人への確認なく味を修正「肉じゃがだけ?」「カレーにはソース」「はい」「目玉焼きには醤油」「好みですね」「私が作ったパスタには、食べる前から粉チーズ」「なるほど」「昨日は言いました。“一口食べてからにして”って」「ご主人は?」「“俺、濃い味好きだから”」私は追記した。本人の味覚を絶対値として運用亜紀さんが笑う。「別に醤油かけてもいいんですよ」「はい」「でも食べてからにしてほしい」「はい」「3時間煮た肉じゃがを、一口も食べずに“修正”されると」少し黙る。「私の味、最初から信用されてないみたいで」私は黒いメニューを取り出した。「では本日は」「はい」「ご主人の味覚に、少し自信をなくしていただきましょう」Aコース『最初の3口・調味料使用禁止』「現実的」「まず料理そのものを味わっていただきます」Bコース『全料理・勝手に味変』ご主人が食べるものすべてに、他人が勝手に調味料を追加。寿司にケチャップ。ラーメンにジャム。プリンに醤油。「最後ひどい」「Bですので」そしてC。Cコース『完全書き殺し・調味料の逆襲』夫が調味料をかけるたび、その調味料が100倍になって返ってくる。「醤油なら?」「100倍」「ソース?」「100倍」「塩?」「非常に危険です」亜紀さんは少し迷う。「でも昨日、夫こう言いました」「何と?」「“味薄かったから足しただけ”」赤ペン。追加罪状:味見前に味の判定「Cですね」

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